芝生を効率よく刈れる人とそうでない人の違いはどこにあるのか?

データを使ったインタラクティブな記事を公開するウェブメディア「The Pudding」が芝刈りを模した経路選択ゲームを開発し、3万人以上の参加者がどのように効率的なルートを見つけるのかを分析しました。参加者の移動経路や停止時間を記録した結果、最適解にたどり着いた人とそうでない人の行動に差があることがわかりました。
Why some people mow a lawn better than others
https://pudding.cool/2026/06/mow/

上記ページにアクセスすると、実際に分析実験に使われた芝刈りのシミュレーションゲームに挑戦できます。「START」をクリック。

8×8=64マスに広がる芝生を、芝刈り機で刈っていきます。芝刈り機を持つ人間はキーボードの矢印キーで動かすことができ、芝刈り機が通過したマスは芝が刈られます。ただし、石が置いてあるマスは通過することができません。ゲームの目的は「いかに効率的に芝刈りができるか」なので、「一度通過した場所は通らず、すべてのマスを一筆書きで通過できるか」がポイント。

すべての草を刈ったらゲーム終了。

結果が表示されました。今回は一筆書きで一発クリアに成功、手数は49手でした。左が今回プレイした芝刈りルートで、右は最適解ルート。同じ49手ですが、解答と提示された最適解はちょっとルートが異なります。

この芝刈りゲームを使った調査には、記事作成時点で少なくとも3万954人が参加しています。参加者の52%は最短経路から5手以内に収まり、16%は49手で完全な最適解に到達しています。中央値でも効率は91%で、一般の参加者でもかなり良い経路を見つけていました。

参加者全体が使った経路は1万4589種類に上り、存在する12通りの最適経路もそのすべてが発見されました。

成績の良い人と悪い人を分けた最大の要因は、序盤にある1カ所の分岐でした。芝生の下部は並んだ石によって左右のエリアに分けられていますが、入口の幅が1マスである上に左側の区画は奥が行き止まりになっているため、左側を先に刈ると同じマスを引き返さなければなりません。

手数が多くかかってしまった人は左側に進んでしまう傾向があったのに対し、最適解または最適解から2手以内だった人は先に右側を処理し、最後に左側の行き止まりへ入ってそのまま終了する経路を選ぶ傾向がありました。つまり、優れた参加者は目の前のマスだけを順番に処理したのではなく、「最後にどこで終わるべきか」を早い段階で考え、行き止まりを終了地点として予約することで、無駄な往復を避けていたというわけです。
例えば、54手で完了した「Bones」という参加者は開始前に2.9秒ほど盤面を眺めましたが、最初の重要な分岐では0.7秒しか迷わず、行き止まりのある左側へ進みました。しかし、左側の端に到達して初めて進めないことに気付き、石の手前で2.4秒停止。区画を抜けるために、すでに通ったマスを複数回通り直す必要が生じ、結果として最適解より5手多くなりました。

The Puddingは「Bonesの問題は移動速度が遅かったことではありません。分岐の時点で先の構造を十分に検討せず、行き止まりに到達してから対応したことです。つまり、事前に計画するのではなく、問題が起きてから反応していました」と述べています。
一方、最適解を出した参加者の一人であるSarahは、左側が行き止まりになっていることを見て、「そこを最後に終える必要がある」と判断し、左側へ入るのを避けて先に右側を片付けています。移動時間のデータでも、Sarahが最上段の分岐直前で長く考えていたことが確認されました。そして、一度方針を決めた後は比較的迷わずに進んでいます。

さらにThe Puddingは、芝生が大きく複雑になるほど成績が下がると予想していました。従来の研究では訪問地点が増えるにつれて、人間の解答が最適解から離れていく傾向が示されていたためです。しかし今回の実験では、最適経路が26手の芝生でも177手の芝生でも、中央値の効率はおおむね90%前後に保たれていました。
The Puddingは人間が高い効率を維持できた理由として、「分解」と「圧縮」という2つの方法を挙げています。
「分解」とは、大きな芝生全体を一度に解こうとせず、複数の小さな区画に分けて順番に処理する方法です。Sarahも、処理済みの範囲を後ろに残しながら、芝生を部分ごとに片付けたと説明しています。全体の経路を記憶するのではなく、目の前の小さな問題を解くことで認知的な負担を抑えていました。
「圧縮」とは、前のステージで学んだことを、個々の経路ではなく一般的なパターンとして覚えることです。例えば、「行き止まりは最後に残す」「開けた場所は蛇行して埋める」「区画を完了してから次へ進む」といった簡単な規則に変換すれば、より大きな芝生にも応用できます。
また、すべてのステージを完了した7235人について、1マス当たりの所要時間と経路の効率を比較したところ、両者の関係は非常に弱いものだったとThe Puddingは述べています。つまり、早く終えた人が必ずしも雑だったわけではなく、時間をかけた人が必ずしも優れていたわけでもなく、単純に「長く考える」ことが良い解答を保証するものではありませんでした。重要だったのは考えた時間の総量ではなく、「どこで立ち止まって考えたか」だとThe Puddingは論じました。
成績上位10%の参加者は、序盤や経路が分かれる地点、障害物の間を抜けた後の進路を決める地点で長く停止していました。先の構造を考え、最終的に行き止まりへ到達するよう経路を組み立てていたため、終盤ではほとんど迷わず進めました。一方、成績下位10%の参加者は序盤をほとんど止まらずに進み、角や行き止まりにぶつかってから考える傾向がありました。問題を事前に予測するのではなく、進めなくなった時点で初めて経路を修正したため、引き返しが増えました。
上位者と下位者の基本的な移動速度には、それほど大きな違いがありませんでした。差を生んだのは、上位者が重要な分岐に注意を集中させ、判断する必要のない直線部分では迷わなかったことだといえます。つまり、優れた経路選択を支えるのは、すべてを完璧に計算する能力ではなく、重要な判断だけに思考を割り当てる効果的なヒューリスティックだとThe Puddingは結論づけています。
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in 教育, ウェブアプリ, Posted by log1i_yk
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