火星で初めて「地震」が観測される

by Kevin Gill

火星は太陽系に属する地球型惑星であり、かつては水があり何らかの微生物が生きていた可能性も指摘されています。そんな火星を探査する試みは長年にわたって続けられており、ついに「火星で初めて地震を観測した」とNASAが発表しました。

First ‘marsquake’ detected on red planet
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01330-3

NASA's InSight lander has detected 1st 'marsquake,' scientists say | CBC News
https://www.cbc.ca/news/technology/mars-nasa-probe-insight-lander-1.5108150

NASAは2018年5月5日に火星探査機のインサイトを打ち上げており、2018年11月26日にインサイトは火星の赤道付近にあるエリシウム平原へ着陸することに成功しました。インサイトは着陸してまもなく火星から最初の写真を送信しており、写真では遠くに見える地平線や機体の一部、ダストカバーに付着した火星の粒子らしきものが確認できます。

カメラを搭載しているインサイトですが、主なミッションは火星の地表面に地震計を設置したり火星内部の温度を測定したりして、火星に関する地質学的研究を進めることです。そして着陸から4カ月以上が経過した2019年4月6日、ついにインサイトは火星で地震を観測することに成功します。これまでに火星で地震が観測されたことはなく、今回の観測が史上初となります。

今回の揺れは非常に弱いものでしたが、NASAの惑星科学者であるRenee Weber氏は、「まだミッションの初期段階ですが、火星の地震は月で発生する地震の月震よりも地球の地震に近いようです」と述べました。今のところ、揺れが火星の内部から発生したものなのか、それとも隕石などの衝突によって引き起こされたものなのかは明らかになっていないそうです。

NASAのジェット推進研究所に勤めており、インサイトのプロジェクトを率いる研究者のBruce Banerdt氏は、「私たちはこれまで火星のバックグラウンドノイズを集めてきましたが、今回の地震観測は『火星の地震学』という新たな分野を開拓しました」と述べています。

インサイトは火星で地震を観測するため、3つの非常に敏感な地震計を風から守るドームの中に入れた、フランス製計器を使いました。当初は計器の頭上を風が吹くことによって引き起こされる振動ばかりが計測されていたそうですが、4月6日に観測された振動は火星の内部から来たものとみられています。

「今回観測されたものは、私たちがこれまでに観測したことのないものでした」と、ジェット推進研究所の惑星地震学者であるMark Panning氏は話しています。4月6日の揺れ以外にもインサイトは3月14日、4月10日、4月11日に地震らしき揺れを観測したそうですが、これは4月6日の揺れよりもかすかなものであり、火星の地震であるとは言い切れないとのこと。

記事作成時点では地震がどのような原因によって引き起こされたのかは不明ですが、インサイトの最終的な目的は地震エネルギーがどのように放射されたのかを追跡し、火星の内部構造を把握することです。インサイトはほぼ2年間にわたって火星上で観測を続ける予定となっており、今後も新たな地震データが収集されていく可能性があります。

by DLR German Aerospace Center