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イーロン・マスク率いるSpaceXはStarlinkユーザーが2022年中に2000万人を超えると予測していたが現実はわずか100万人強

by Tony Webster

イーロン・マスク氏が設立した民間宇宙企業のSpaceXは、人工衛星や宇宙船の打ち上げに加えて衛星インターネットのStarlinkを展開しています。かつてSpaceXは、「2022年の時点でStarlinkの加入者は2000万人に達する」と予測していたものの、実際にはそれを大幅に下回る100万人程度の加入者しか得られていないと、経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。

Starlink Surges but Is Still Far Short of SpaceX’s Goals, Documents Show - WSJ
https://www.wsj.com/tech/spacexs-starlink-demonstrates-its-power-but-still-needs-growth-9906c5b0


SpaceX projected 20 million Starlink users by 2022—it ended up with 1 million | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2023/09/spacex-projected-20-million-starlink-users-by-2022-it-ended-up-with-1-million/

ウォール・ストリート・ジャーナルは、SpaceXが投資家から資金を調達するため2015年に行ったプレゼンテーションの中で、後にStarlinkと名付けられる衛星インターネット部門は2022年に約120億ドル(約1兆7700億円)の売上高と70億ドル(約1兆円)の営業利益を生み出すと予測されていたと報じています。また、2022年末までに衛星インターネットサービスの加入者は2000万人に達すると、当時のSpaceXは予測していました。


しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルが最近閲覧した内部文書によれば、Starlinkの売上高は2022年の時点で14億ドル(約2100億円)であり、成長はしているもののプレゼンテーションの予測には遠く及んでいないとのこと。文書にはStarlinkの事業の収益性についての言及はなかったそうですが、2022年は全体で見て赤字であり、2023年度第1四半期はわずかに黒字だったことが示されていたそうです。

また、Starlinkの加入者数も過去の予測ほどには増えていません。SpaceXは2022年12月に、Starlinkのアクティブユーザー数が100万人を超えたことを報告しており、2000万人という数字に到達するのはかなり先になるとみられます。

Starlink now has more than 1,000,000 active subscribers – thank you to all customers and members of the Starlink team who contributed to this milestone ❤️???????? https://t.co/5suNxFvtEH pic.twitter.com/E1ojYarcEA

— SpaceX (@SpaceX)


ウォール・ストリート・ジャーナルは、「Starlinkは衛星インターネットの大勢の懐疑論者が提起した現実にぶつかっています。それは、このビジネスが衛星インターネットサービスを提供でき、高速ブロードバンドを利用する余裕がある世界人口の大半が、都市部に住んでいるということです。都市部ではインターネットサービスが簡単に利用可能であり、それは通常Starlinkよりも月額費用が安く、専門的な設備も必要ありません」と述べています。

近年のStarlinkは、地球表面のほとんどが海であり基地局を建設するのが難しいという点に着目し、船舶航空機などに衛星インターネットを提供する道を模索しています。しかし、国際海運業者や沿岸部の石油採掘リグ、航空企業といった潜在顧客の市場は比較的小さいとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘しました。

とはいえ、マスク氏は以前からビジネスを実行する前の予測で大げさな展望を掲げることが多く、Starlinkが2023年度第1四半期に黒字だったという点は良い兆候といえます。規制当局への提出書類によると、SpaceXが最後に資金調達を行ったのは記事作成時点から1年以上前であり、マスク氏は2023年4月の時点で「追加の資金調達は必要ない」との見方を示しています

Starlinkのサービスは2023年7月時点で60カ国以上で展開されており、利用するためのユーザーキットは家電量販店やホームセンターなどでも販売されています。日本のコストコでも、2023年8月にStarlink端末の販売が開始されました

また、長らくStarlink用アンテナは赤字で製造されてきましたが、SpaceXの幹部は9月13日に開催されたビジネス会議で、もはやSpaceXはStarlinkアンテナの赤字製造を行っていないと報告しました。

SpaceX no longer taking losses to produce Starlink satellite antennas
https://www.cnbc.com/2023/09/13/spacex-no-longer-taking-losses-to-produce-starlink-satellite-antennas.html


なお、ロシアとウクライナの紛争が始まった当初、マスク氏は真っ先にStarlinkをウクライナに提供することを発表しましたが、後にSpaceXはウクライナ軍によるStarlinkの利用を制限していたことが判明。また、ウクライナ軍によるロシア軍艦への爆撃を阻止するため、Starlinkの通信を遮断するようマスク氏が命令していたことも明らかになっています。

イーロン・マスクはウクライナによるロシア軍艦への爆弾攻撃を阻止するためにStarlinkの通信を遮断するよう命令していたことが明らかに - GIGAZINE


この件を巡り、アメリカの上院軍事委員会は「なぜウクライナを支援する決定が民間企業であるStarlinkによって行われ、国防総省を含む政府が決定を下さなかったのか」という点について調査を始めたとのことです。ジャック・リード委員長は、「深刻な国家安全保障責任の問題を明らかにするため、委員会はこの問題に取り組んでいます」「イーロン・マスク氏や他の誰であろうと、民間人はアメリカの国家安全保障について最後の責任を負うことはできません」とコメントしました。

Elon Musk Denial of Ukraine’s Starlink Request Prompts Senate Probe - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-09-14/elon-musk-s-denial-of-ukraine-s-starlink-request-prompts-senate-query

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in メモ, Posted by log1h_ik

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