サイエンス

なぜ楽しかったはずの思い出を忘れてしまうのか?脳の容量には限界があるのか?


子ども時代や学校生活の思い出を家族や友人と語り合ってる時、「別の友人はよく覚えている印象的な出来事を、自分はまったく覚えていない」ということに驚いた経験があるかもしれません。一体なぜ人は楽しかったり印象的だったりする思い出を忘れてしまうのか、脳の容量には限界があるのかについて、イギリスのブリストル大学で解剖学教授を務めるミシェル・スピア氏が解説しました。

Headspace: can our brains get full?
https://theconversation.com/headspace-can-our-brains-get-full-279173

スピア氏は夫と過去の休暇について話していた時、夫から「自分はまったく覚えていない楽しそうな思い出」を語られて、お互いに驚いた経験があるとのこと。「記憶は人によって異なる場合があるとわかってはいますが、一体なぜこれほどまでに違うのでしょうか?なぜ私にはこの記憶がないのでしょう?仕事で忙しいから、単に記憶容量が足りなくなっただけなのでしょうか?」とスピア氏は述べています。


人の記憶の不正確さについて話す際、「脳の記憶容量が限界に達した」という風に、人の脳をまるでPCのハードディスクのように形容することがあります。しかし、スピア氏によると脳の記憶容量は限界に達するのではなく、むしろ入ってくる情報を「ろ過」しているそうです。

日常生活で入ってくる情報はあまりに多く、たった1日分の風景・音・会話だけでもすべてを処理することは困難です。そのため脳は、その時の「注意」によって何を認識するのかを決定し、「感情」によって何を記憶するべきなのかを選別しており、最終的に海馬などの構造が長期記憶に保存する価値のある情報を決定しています。

この過程のどこかに問題があると、ある出来事の記憶がうまく形成されない可能性があります。たとえばスピア氏と夫のケースであれば、夫はその出来事をじっくりを味わって記憶に刻み込んでいたかもしれませんが、スピア氏は次の目的について考えていたり、単にぼーっとしていたりしたのかもしれません。その場合、スピア氏の脳にはその出来事がほんの少ししか記憶されず、夫の話を聞いても思い出せなかった可能性があるとのこと。


たとえある出来事が記憶されたとしても、それはPCに保存されたファイルやデータのように、「固定された記録」として保存されているわけではありません。人は記憶を思い出すたびに感覚的な詳細や過去の知識、そして期待といった断片的な情報を基に記憶を再構築しています。

会話や内省、語り直しといったプロセスを繰り返すことにより、記憶はより強固で一貫性のあるものへと変化していくとのこと。これらの記憶に関するメカニズムが、「同じ出来事を経験したはずなのに記憶している内容や詳細度が違う」という現象を説明するのに役立つと、スピア氏は述べています。

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in 無料メンバー,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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