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ボーイングのCEOが2024年末をもって退任することを発表、2024年1月の事故に対する引責か


アメリカの航空宇宙機器大手「ボーイング」のデイブ・カルフーンCEOが2024年末をもって辞任することを発表しました。ボーイングでは、2024年1月6日にボーイング737MAX9の壁面パネルが剥離して緊急着陸する事故が発生しており、今回のカルフーン氏の辞任はその責任を取ったものとみられています。

Boeing Announces Board and Management Changes - Mar 25, 2024
https://boeing.mediaroom.com/2024-03-25-Boeing-Announces-Board-and-Management-Changes


Boeing CEO Dave Calhoun to step down in shakeup amid safety crisis | Reuters
https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/boeing-ceo-calhoun-step-down-2024-03-25/

カルフーン氏は2018年のライオン・エア610便墜落事故ならびに2019年のエチオピア航空302便墜落事故後にCEOに就任し、約5年にわたりボーイングのトップを務めてきました。

しかし、2024年1月6日にアラスカ航空1282便で離陸直後に壁面パネルが剥離する事故が発生。機体はただちに引き返して乗員乗客177人は全員無事でしたが、アメリカ連邦航空局(FAA)は、アメリカの航空会社が保有する機体およびアメリカ領空を運航するすべてのボーイング737MAX9について点検を行うまで一時運航停止を命じていました。

ボーイング737MAX9の運航停止を連邦航空局が命令、アラスカ航空の壁面パネル剥離事故の影響 - GIGAZINE


さらに、その後の調査では、ボーイングがコストダウン目的で外注した部品の品質保証がずさんだったことが明らかとなっています。この調査では、チェック中のボーイング737MAX9において、検証班が打ち間違ったリベットに上からペンキを塗ることで問題なしと報告し、ボーイングの品質保証班もそれでOKと判断したことが告発されています。

離陸直後にドア落下事故を起こしたボーイング737MAX9は外注部品製造の品質保証がずさんであるという告発 - GIGAZINE


加えて、アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)による調査では、事故機のメンテナンス作業を記録した監視カメラの映像が上書きされていたことが報告されているほか、ボーイングの現役従業員を名乗る人物から「ボーイングでは航空機の安全確保は実績として認められず、株価の上昇にもとづいて昇給や賞与が判断される」「経営陣は研究開発や工場の増強ではなく株価の上昇のために資金を費やしている」「安全性の確保よりも納期が優先される」との告発文が投稿されており、安全性に関するボーイングの文化への懸念が指摘されていました。

ボーイングの飛行機ドア脱落事故の調査で「監視カメラ映像が上書きされて重要情報が消えていた」ことが判明&社員が「安全より納期を優先する社内体制」を告発 - GIGAZINE


これらの告発や調査結果を受けてカルフーン氏は2024年3月25日、2024年末をもってCEOを退任することを発表しました。従業員に宛てた書簡でカルフーン氏は「1月に発生したアラスカ航空の事故はボーイングにとって大きな転機となりました。ボーイングはこの事故への対応を続けなければなりません」と述べています。

さらにボーイングのラリー・ケルナー会長は再任に立候補しない姿勢を示しているほか、民間航空機部門を率いてきたスタン・ディール氏は2024年3月25日をもってボーイングを退社したことが報告されています。なお、ディール氏の後任にはステファニー・ポープCOOが就任するとのこと。


一方で投資会社「ダコタ・ウェルス」でシニア・ポートフォリオ・マネージャーを務めるロバート・パブリク氏は「ボーイングにとって必要なのは、CEOや会長、幹部の刷新だけではありません。ボーイングの意志決定能力はどうやらまひしているようです。ボーイングの社内体制が変化するには、もう少し時間がかかるでしょう」と厳しく指摘しています。

ボーイングによると、カルフーン氏の後任は今後決定するとのこと。ボーイングでは2023年の決算が5年連続の最終赤字となるなど、厳しい経営状況が続いており、安全性の信頼回復と経営の立て直しが次期CEOへの大きな課題となっています。

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in 乗り物, Posted by log1r_ut

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