ソフトウェア

オープンソースプロジェクトを有料化して月収100万円の事業家に転身したソフトウェア開発者


インターネットを形作っているさまざまな技術は、オープンソースプロジェクトに携わる多くの人々の支援と献身によって支えられています。電子メールクライアント「EmailEngine」を作ったソフトウェア開発者のアンドリス・ラインマン氏が、オープンソースプロジェクトの作者から有料APIの開発者に転身するまでの経緯とその結果をブログでつづりました。

How I turned my open-source project into a business
https://docs.emailengine.app/how-i-turned-my-open-source-project-into/


エストニアの技術者であるラインマン氏が、最初にオープンソースプロジェクトを立ち上げたのは、記事作成時点からさかのぼること約15年前の2010年のことです。

Node.jsアプリケーション用のメール送信モジュールである「Nodemailer」を開発したラインマン氏は、NodemailerにMITライセンスのような緩いライセンスだけを付与して、オープンソースで広く公開しました。

当時のラインマン氏は、Nodemailerがオープンソースのライブラリとして大企業に活用されることを名誉だと考えており、大手電子メールサービスの創設者がメールで送ってきた寄付の申し出を突っぱねたことさえありました。

しかし、そんな過去の自分をラインマン氏は「今にして思えば、私はなんて愚かだったのでしょう」と突き放しています。


変化のきっかけは、Nodemailerを使ったスタートアップが5億ドル(記事作成時点のレートで約750億円)で買収されたことです。当時、経済的に困窮していたラインマン氏は、無料のNodemailerが多くの開発者の時間を節約し、1日に何百万通ものメールを送るのに役立てられているにもかかわらず自分の懐はさみしいままだということに気がつき、やり方を大きく変えることを決意しました。

こうして、EmailEngineの前身となるソフトウェアを開発したラインマン氏は、当時「IMAP API」と呼ばれていたこのプロジェクトをLGPLライセンスに基づいてリリースしました。また、MITライセンス版も用意しましたが、それを入手するには年間250ユーロ(約4万円)のサブスクリプションに加入しなければならないようにしました。

ところが、この事業計画の出だしは不調で、総収益は1年半で750ユーロ(約12万円)にとどまりました。なぜなら、企業はライセンスにまったく関心を示さず、サブスクリプションに加入したのは純粋にラインマン氏を応援したい一握りの人だけだったからです。


無償公開はもうたくさんだと感じたラインマン氏は、IMAP APIのUIをプロフェッショナルらしいものに刷新し、ライセンスをLGPLから商用ライセンスに切り替え、ライセンスキーシステムを導入してEmailEngineとして公開しました。

再出発したEmailEngineには試用オプションすらなく、価格は据え置きの年間250ユーロでしたが、リリース初月に元の倍以上の1750ユーロ(約28万5000円)の収益を達成した時、プロジェクトの方針が固まりました。

ラインマン氏はサブスクリプション料金を250ユーロから495ユーロ(約8万円)へと倍増させ、最終的に895ユーロ(約15万円)まで値上げしましたが、顧客は減少せず、売上は増えていきました。その理由について、ラインマン氏は「1000ユーロ(約16万円)に満たない出費など、企業にとってはどうってことないので、ただ収益だけが改善したのでしょう」と述べています。


記事作成時点でのEmailEngineの月次経常収益(MRR)は6100ユーロ(約100万円)で、収益は順調に伸びており、ラインマン氏はこのプロジェクトにフルタイムで取り組むようになりました。そんなラインマン氏の唯一の後悔は、自分のプロジェクトをオープンソースで無料公開したりせず、もっと早く有料ソフトとして販売していればよかったという点だとのこと。

ラインマン氏はブログの末尾に、「不特定多数の人の善意に頼るより、企業顧客を相手に製品を販売する方が間違いなく信頼できるし、予測可能です」と記しました。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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