サイエンス

マジックマッシュルームの幻覚成分「シロシビン」が拒食症の治療に有効かもしれないと臨床試験で示される


マジックマッシュルームの幻覚成分であるシロシビンは、うつ病アルコール依存症頭痛などの治療に役立つ可能性があることが示唆されています。新たに、人間を対象にした臨床試験でシロシビンが致命的な神経性食欲不振症(拒食症)の治療に有効である可能性が示されました。

Psilocybin therapy for females with anorexia nervosa: a phase 1, open-label feasibility study | Nature Medicine
https://www.nature.com/articles/s41591-023-02455-9


Psychedelic psilocybin could treat anorexia in some patients, trial suggests | Live Science
https://www.livescience.com/health/medicine-drugs/psychedelic-psilocybin-could-treat-anorexia-in-some-patients-trial-suggests

拒食症とも呼ばれる神経性食欲不振症は、やせた体形への強い願望や肥満に対する病的な恐怖心などが原因となり、極端な食事制限を伴うダイエットに走ってしまう病気です。10代の女性に多く見られる精神疾患であり、栄養失調による無月経や低血圧、低カリウム血症、肝機能障害、ホルモンバランスの異常といった症状が現れます。

神経性食欲不振症の患者は十分にやせている状態であってもさらに体重を減らそうと試み、わずかな体重増加でさえも失敗とみなす傾向があるほか、自分自身が病気であることを認めたがらないケースが多いとのこと。診断が下された患者の約70%は10年以内に回復するものの、過酷なダイエットのために突然死してしまう患者も多く、10年後死亡率が10%に達する危険な病気です。また、神経性食欲不振症は治療が難しいことでも知られており、承認された治療薬は存在していません。


カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、さまざまな精神障害への有効性が認知されているシロシビンが、そんな神経性食欲不振症を治療するために使えるかどうかを調べる臨床試験を実施しました。

研究チームは神経性食欲不振症を患う18~40歳の被験者10人を集め、専門のセラピストによる心理的サポートを提供しつつ、25mgの合成シロシビンを1回投与しました。投与から3カ月後のフォローアップ調査では、9人の被験者が人生についてより前向きな見通しが持てるようになり、8人が「人生で5本の指に入るほどの体験」を得たと述べ、7人が生活の質が向上したと回答しました。

さらに、被験者のうち4人は投与から3カ月後の時点で、神経性食欲不振症の症状が寛解状態となったことも報告されています。被験者のうち2人は投与直後に低血糖状態となったもののすぐに回復し、すべての被験者において深刻な副作用は見られなかったとのことです。


シロシビンは神経伝達物質であるセロトニンの受容体・5-HT2Aに作用し、さまざまな精神障害の治療に前向きな効果をもたらすと考えられています。

論文の共著者であるカリフォルニア大学精神医学教授のウォルター・ケイ氏は科学系メディアのLive Scienceに対し、「推測ではありますが、神経性食欲不振症で変化したセロトニンの機能をシロシビン投与が回復させ、患者が自身の症状や行動に対して新たな視点を持つのを助けた可能性があります」と語りました。

なお、今回の研究では10人の被験者全員が女性であり、そのうち9人が自分自身を白人だと認識していたことから、性別・人種・文化的な多様性が欠けているとのこと。また、シロシビンではなく偽薬を投与した対照群との比較も行われていないため、研究チームは今後の研究でさらに多様な患者のグループを集め、さまざまなシロシビンの投与量をテストする必要があると指摘しています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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