サイエンス

日中のどうしようもない眠気を和らげるのに役立つ「カフェインではない薬物」を科学者が特定する


日中の眠気に悩まされたことがあるという人は多いはずですが、特に睡眠中の呼吸が止まってしまう閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の患者は、日常生活に深刻な悪影響を及ぼす日中の過度の眠気(excessive daytime sleepiness:EDS)に苦しむことがあります。そこでカナダのマックマスター大学の研究チームが、OSAやEDSを経験する人々を対象にした複数の臨床試験をレビューして、「日中の過度の眠気を和らげるのに役立つカフェインではない薬物」を特定しました。

Comparative Efficacy and Safety of Wakefulness-Promoting Agents for Excessive Daytime Sleepiness in Patients With Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Network Meta-analysis
https://doi.org/10.7326/M22-3473


McMaster researchers find best treatment for excessive daytime sleepiness – Brighter World
https://brighterworld.mcmaster.ca/articles/mcmaster-researchers-find-best-treatment-for-excessive-daytime-sleepiness/

Scientists Found a Drug That Relieves Daytime Sleepiness – And It's Not Caffeine : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-found-a-drug-that-relieves-daytime-sleepiness-and-its-not-caffeine

OSAは肥満や顎が小さいといった要因で上気道が完全に詰まってしまい、睡眠中に呼吸が止まってしまう状態が頻発する病気です。一般的な症状には睡眠時の大きないびきや頻繁な中途覚醒があるほか、EDSが生活の質に大きな悪影響を及ぼし、認知能力が低下することも最近の研究でわかっています。

マックマスター大学の常勤内科医で論文の筆頭著者であるTyler Pitre氏は、北米では15~30%の人々がOSAを患っている可能性があると指摘。その上で、「その中でも多くの人々がEDSを発症しており、生活の質に影響が及んで生産性も低下し、さらにその他の精神的な問題のリスクも抱えています。このような状況を改善することは、医師にとって最も重要なことです」と述べました。


そこでPitre氏らの研究チームは、OSAとEDSを患う3085人を対象にした14件の臨床試験をレビューし、ソルリアムフェトルアルモダフィニルピトリサントという3種類の抗疲労薬の有効性について調査しました。

分析の結果、程度の差はあったものの3つの抗疲労薬すべてにおいて、偽薬よりもEDSを軽減する効果があることが確かめられました。また、3つの薬の中ではソルリアムフェトルが最も覚醒効果が高いことや、ソルリアムフェトルとアルモダフィニルでも副作用があったものの、アルモダフィニルの方が副作用によって患者が服用を中止する可能性が高いこともわかりました。


複数の臨床試験にまたがる所見を要約するのは困難ですが、ソルリアムフェトルは体を動かすために重要なノルアドレナリンと運動調節や意欲に関わるドーパミンの濃度が脳内で上昇するため、EDSを抑える効果があるとみられています。

ソルリアムフェトルは副作用で血圧が上昇する可能性があるほか、長期的な使用に関する影響がほとんど確認されていないため、今後の研究では長期的なソルリアムフェトルの服用がもたらす影響について調べる必要があるとのこと。


研究チームはこれらの抗疲労薬がEDSを改善するために役立つだけでなく、日常生活に支障が出るほどの疲労感が持続する慢性疲労症候群ロングCOVIDの患者の治療にも効果を発揮する可能性があると考えています。

論文の共著者であり麻酔科医のDena Zeraatkar氏は、「これらの抗疲労薬が慢性疲労症候群やロングCOVIDといった関連疾患の治療において、どの程度有効なのかを知るのは興味深いことです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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