テスラがイーロン・マスクのセンサー排除カメラ重視計画を加速、車両から段階的に超音波センサーを排除すると発表
電気自動車メーカーのテスラは、同社のイーロン・マスクCEOが「人間が2つの目で見ているのだから車もカメラ2つで機能するべきだ」と発言していた通り、カメラだけで車両周辺の環境を分析し自動運転技術を実現することを目指しています。この一環として、2021年には車両に搭載されてきたレーダーセンサーの採用を取りやめると発表。さらに、2022年10月には車両周囲の環境を分析するために用いられてきたセンサーのひとつである超音波センサー(USS)の採用を段階的に取りやめる計画を発表しました。
Tesla Vision Update: Replacing Ultrasonic Sensors with Tesla Vision | Tesla
https://www.tesla.com/support/transitioning-tesla-vision
Tesla removes ultrasonic sensors from new Model 3/Y builds, soon Model S/X [Update] - Drive Tesla
https://driveteslacanada.ca/news/tesla-removes-ultrasonic-sensors-from-new-model-3-y-builds-soon-model-s-x/
Tesla announces it's moving away from ultrasonic sensors in favor of 'Tesla Vision' | Electrek
https://electrek.co/2022/10/04/tesla-moving-away-ultrasonic-sensors-in-favor-tesla-vision/
Tesla ditches ultrasonic sensors from new cars as it bets on camera-only driver assistance - The Verge
https://www.theverge.com/2022/10/5/23388770/tesla-ultrasonic-sensors-uss-model-3-y-s-x-radar
テスラは車両に搭載されている高性能カメラを有効活用するため、自社開発のパワフルなビジョンプロセッシングツールの「テスラビジョン」を採用しています。テスラビジョンはディープニューラルネットワーク上に築かれており、従来のビジョンプロセッシング技術では到達不可能なレベルの信頼度で、車両周辺の環境を分析することが可能です。
2021年5月には、「北米市場向けに製造された『モデル3』『モデルY』からレーダーセンサーを排除する」と発表し、レーダーセンサーの代わりにテスラビジョンを重視するという計画を発表しました。
テスラが「モデル3」と「モデルY」からレーダーを排除、運転支援機能にカメラを用いる方針を打ち出す - GIGAZINE
後に、レーダーセンサーからテスラビジョンへの移行はマスクCEOが推し進める計画であったことも明らかになっています。
「人間が2つの目で見ているのだから車もカメラ2つで機能するべきだ」とレーダー排除を推し進めたイーロン・マスクの考えとは? - GIGAZINE
テスラはこのレーダーセンサーからテスラビジョンへの移行が上手く進んでいることをアピールしており、「現在世界中のほとんどの地域で、モデル3やモデルY、モデルS、モデルXといった車両はテスラビジョンに依存したオートパイロットシステムを提供しています」と言及。さらに、レーダーセンサー搭載車両と比較して、テスラビジョン搭載のモデル3およびモデルYは、アメリカとヨーロッパでアクティブセーフティ(安全運転サポート機能)の評価を維持あるいは向上させることに成功しているとアピールしています。
これに続き、モデル3およびモデルYからUSSを削除することで、テスラビジョンを次のステップに進める計画をテスラが発表しました。今後、新車のモデル3およびモデルYにはUSSが搭載されなくなり、その後、2023年からはモデルSとモデルXにもUSSが非搭載となります。
USSの削除に伴い、テスラが提供する完全自動運転機能である「FSD」のベータ版では、ビジョンベースの占有ネットワークを同時に立ち上げることで、USSによって生成されてきた入力を置き換えるよう試みられます。このアプローチにより、テスラのオートパイロットに高解像度の空間ポジショニング関連情報、より長い範囲の可視性、オブジェクトを認識して区別する機能などが提供できるようになるとテスラはアピール。なお、テスラは「他の多くの機能と同様に、占有ネットワークは時間の経過と共に急速に改善されます」とも記しています。
USSからテスラビジョンへの移行期間中、USS非搭載のテスラビジョン搭載車両は、以下の一部機能が一時的に制限あるいは停止した状態で提供されることとなります。これらの機能はUSS非搭載のテスラビジョン搭載車両が、USS搭載車両と同等のパフォーマンスを達成可能となった時点で、ソフトウェアアップデートを通じて復元される予定です。なお、これ以外のオートパイロットおよびFSD機能は、USS非搭載のテスラビジョン搭載車両でも引き続き利用可能となります。
・パーキングアシスト:車両が時速5マイル(約8km)未満で走行しているときに、周囲の物体を検知・警告する機能
・オートパーキング:駐車スペースに自動で移動する機能
・サモン:テスラアプリを介して車両を手動で前後に動かすことができる機能
・スマートサモン:テスラアプリを介して車両をユーザーの現在地あるいは指定した場所までナビゲートする機能
テスラによると、車両のフロントバンパーとリアバンパーにそれぞれ6つずつ小さな円があるのがUSS搭載車両だそうです。
電気自動車関連メディアのElectrekは、「これはテスラによるコスト削減の取り組みであるかのように思えるかもしれませんが、テスラはUSSを埋め込む必要がないほど自社のテスラビジョンが優れたテクノロジーであると信じています」と言及。
The Vergeは「レーダーセンサーからテスラビジョンへの移行に何も問題がなかったというわけではありません。車両が何かに衝突しそうであると誤検知して運転支援システムが自動でブレーキをかけてしまう『ファントムブレーキ』と呼ばれる問題の報告が増加しました。ワシントンポストも、テスラがレーダーセンサー非搭載の車両を出荷し始めたタイミングで、国家道路交通安全局に対してテスラの自動ブレーキ機能に関する苦情が増加したと報じています」と報じ、USSが非搭載となることで別の問題が起きる可能性を危惧しています。
・関連記事
テスラが「モデル3」と「モデルY」からレーダーを排除、運転支援機能にカメラを用いる方針を打ち出す - GIGAZINE
「人間が2つの目で見ているのだから車もカメラ2つで機能するべきだ」とレーダー排除を推し進めたイーロン・マスクの考えとは? - GIGAZINE
超音波センサーやファルコンウィングドアを搭載し自動運転にも対応した未来感あふれるテスラ「モデルX」「モデルS」をじっくり見てきました - GIGAZINE
テスラの自動運転「オートパイロット」で実際に走ってみるとこんな感じ - GIGAZINE
スティーブ・ウォズニアックが「イーロン・マスクやテスラの言うことはもう何も信じない」と発言 - GIGAZINE
・関連コンテンツ