サイエンス

地球の自転が早くなることで「負のうるう秒」が生まれるかもしれない


「1日」という時間の区切りは大まかには地球の自転で決められていますが、実際には時間の長さはセシウム133という原子の状態に基づいて厳密に定義されています。そのために地球の自転は24時間ぴったりとはならず、ごくわずかなズレを調整するためにうるう秒が導入されることがあります。しかし、地球の自転速度が少しずつ上がっているために「負のうるう秒」が発生する可能性があるとのことです。

Shorter Days as Earth's Rotation Speeds Up
https://www.timeanddate.com/time/earth-faster-rotation.html


Earth is whipping around quicker than it has in a half-century | Live Science
https://www.livescience.com/earth-spinning-faster-negative-leap-second.html


かつて地球の自転周期が一定だと考えられていたことから、1秒という時間の長さは、「地球の自転周期の86400分の1」と定義されていましたが、地球の自転速度が海流や大気の循環の影響を受けて一定ではないことが判明。そこで、1956年の国際度量衡委員会で、1秒の長さが「1899年12月31日12時から計測した地球の公転1周期の3155万6925.9747分の1」と再定義されました。

しかし、この定義も過去の基準値を再測定できないことから再現性に問題がありました。そのため、1967年の国際度量衡委員会で、1秒は「セシウム133原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を91億9263万1770Hzと定義した時の長さ」と定められました。

セシウム133には「基底状態」と「励起状態」という2つのエネルギー状態があり、特定のマイクロ波を当てることで基底状態から励起状態に変化します。この特定のマイクロ波が91億9263万1770回振動するのにかかる時間を1秒と定義しているわけです。セシウム133原子を使うことで、現代の人類は再現性の高い時間の定義を手に入れました。


ただし、原子の性質から定められた秒の定義から定めた原子時間と、地球の動きから定められる天文学的時間にはわずかにズレが生まれてしまいます。そこで、時折「うるう秒」を追加することで原子時間と天文学的時間のズレが修正されています。うるう秒は、23時59分59秒→23時59分60秒→00時00分00秒という形で、1月1日あるいは7月1日に1秒挿入され、記事作成時点で計27回追加されています。

実際にうるう秒が挿入される瞬間は以下の記事で見ることができます。

うるう秒「8時59分60秒」を挿入するまさにその瞬間を明石市立天文科学館で目撃した現地レポート - GIGAZINE


しかし、2020年は観測記録上最も短い1年だったと報告されています。1973年以来、地球の自転1周期が最も短かったのは2005年7月5日で、8万6400秒-1.0516ミリ秒だったそうですが、2020年中にその記録よりも短かった1日が28回も観測されたとのこと。なお、最も短かった1日は2020年7月19日で、8万6400秒-1.4602秒だったそうです。このことから、地球の自転がこれまでよりも早くなっている可能性が考えられます。

うるう秒のシステムが1972年に導入されてから、地球の自転1周期は平均して8万6400秒よりも少しだけ長かったため、これまでのうるう秒は「+1秒」という正の数でした。しかし、地球の自転が早くなってしまうことで、「-1秒」負のうるう秒が必要になると予想されます。これは、時計上では23時59分58秒→0時00分00秒と、23時59分59秒がスキップされることを意味します。


ただし、イギリス国立物理研究所の物理学者であるピーター・ウィッツバリー氏は「地球の自転周期がさらに早くなれば負のうるう秒が必要になる可能性はあるが、それが実際に必要になるかどうかを判断するにはまだ早いと思います」と述べています。国際電気通信連合の科学者からは「負のうるう秒を導入するよりも、一時的にうるう秒の導入を停止するべき」という声も上がっているとのこと。

なお、うるう秒の導入を決定する国際地球回転・基準系事業は、記事作成時点では新しいうるう秒の追加予定を発表していません。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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