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新型コロナウイルス感染症が2019年12月にフランスですでに広まっていたという研究結果


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国で発生し、フランスでは2020年1月下旬から流行しだしたと考えられています。しかし、新たに発表された論文は、「2019年12月下旬にはCOVID-19がフランスで流行していた」という可能性を示唆しています。

SARS-COV-2 was already spreading in France in late December 2019 - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0924857920301643


新型コロナウイルスは2019年12月に中国・武漢で発生して世界に広まったと考えられていますが、目に見えないウイルスがいつ・どこで発生し、どのように広まったかについては議論が存在します。武漢市保健当局がCOVID-19の最初の感染者を公式に報告したのは2019年12月8日のこと。最も初期に感染したと考えられている患者は12月1日に症状を示し始めていたため、実際に新型コロナウイルスが発生したのはそれ以前のことだとみられています。

一方、フランス当局がCOVID-19感染者を最初に確認したのは2020年1月24日のこと。1月22日に中国から帰国した48歳の男性と、1月18日に中国から帰国したカップルから陽性反応が検出されました。1月24日以降にも中国に渡航歴のある人からCOVID-19が検出され続け、2月入ってからCOVID-19の流行は本格化しました。

しかし、フランス・パリ郊外のアビセンヌ病院とジャン=ベルディエ病院の医師チームがによって新たに発表された論文は、「2019年12月の段階でフランスでCOVID-19が流行していた」という可能性を示唆しています。2つの病院は運営母体が同じであり、医師チームが各病院の救急治療室に「インフルエンザ」として収容されていた患者14人の呼気サンプルを遡及的に分析し直したところ、2019年12月27日に入院した「中国への渡航歴を持たない患者」からCOVID-19の陽性反応が検出されました。


問題の患者は長年フランスに住んでいる42歳のアルジェリア人男性で、職業は魚屋。2019年8月にアルジェリアへ旅行して以降、国外に出てはいませんでした。この患者は2019年12月27日に喀血(かっけつ)、せき、頭痛、発熱などが出たため緊急外来を受診し、入院。リンパ球減少症C反応性蛋白を示し、フィブリノゲンが検出されましたが、プロカルシトニン値は正常。2019年12月29日には経過良好として退院しました。また、問題の患者が症状を示す前に、この患者の子どもの1人が同様の症状を示していたとのこと。

研究チームは今回の検査の正確性について、「遡及的な検査であるため一部の情報が欠落していた可能性があります」「2つの異なる手法によって検査を行いましたが、PCR検査の精度と保存期間中に品質が損なわれたかもしれないため、(PDFファイル)偽陰性の可能性が残されています」と言及し、実際にはより多くの感染者がいたものの遡及的に陽性を確認できなかった可能性があると主張しています。


研究チームは今回の結果について、「無症状病原体保有者の割合なども考慮に入れると、この調査結果は2019年12月末にはフランス国内でCOVID-19が流行していたという可能性を示唆しています」とコメントしています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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