NASAの探査機「ボイジャー2号」が太陽系を離脱して「星間空間」に到達

1977年に打ち上げられて41年に及ぶ長い旅を続けてきたNASAの無人宇宙探査機「ボイジャー2号」が、太陽風が届く範囲である太陽圏から離脱して星間空間に入ったことが発表されました。2012年に人工物として初めて星間空間に到達した「ボイジャー1号」に続く史上2度目の偉業となっています。

NASA’s Voyager 2 Probe Enters Interstellar Space | NASA
https://www.nasa.gov/press-release/nasa-s-voyager-2-probe-enters-interstellar-space

Nasa's Voyager 2 probe 'leaves the Solar System' - BBC News
https://www.bbc.com/news/science-environment-46502820

NASAは現地時間の2018年12月10日、ボイジャー2号が太陽圏の外に出たことを発表しました。ボイジャー2号に搭載された5つのセンサーの観測データを分析したところ、ボイジャー2号は2018年11月5日、太陽圏とその外側の宇宙空間との境目「ヘリオポーズ」に到達したことがわかりました。

ヘリオポーズは、太陽から吹き出された太陽風が最も遠くまで届く境界面で、太陽を中心に太陽系の星々を包んで守っている泡のような領域を形成しています。ヘリオポーズが近づくと、太陽から届く太陽風が徐々に観測されなくなり、代わりに宇宙空間から届く宇宙線の観測量が増加します。宇宙線は太陽系の外から届くエネルギー粒子で、小惑星の表面に傷を付けるほど高いエネルギーを持っていますが、太陽から吹き出す太陽風と太陽の磁気圏によって太陽系は宇宙線の影響から守られています。

ボイジャー2号の観測データをNASAの科学者が分析したところ、2018年11月5日に太陽風が観測されない状態になり、さらには太陽圏外から届く宇宙線の量が増加。これにより、ボイジャー2号の太陽圏脱出が確認されました。


ボイジャー2号は1977年8月20日に「タイタンIIIEセントールロケット」によって打ち上げられた無人探査機です。1981年に当初の目的であった土星探査を無事に完了した後は追加のミッションが与えられ、1986年には天王星に最接近して観測を実施。さらに1989年には海王星にも最接近して観測を行い、数々の発見をもたらしています。その後、ボイジャー2号には太陽圏を超えた領域で太陽系がどのようになっているのかを調べる「星間空間ミッション」が与えられました。

ボイジャー2号は地球から約177億km離れた領域を太陽との相対速度・秒速約15kmで飛行しており、ボイジャー2号から発された信号が地球に届くまでには約16時間もの時間がかかります。それほどまでに遠い場所にあるボイジャー2号から正確に信号が届けられているのは、ボイジャーに搭載する太陽センサーを使って姿勢が整られえているため。太陽と恒星「カノープス」の位置から割り出した地球の方向に正確にアンテナを向けているボイジャー2号ですが、太陽から遠ざかるにつれて太陽光の検出が難しくなるため、ボイジャー2号との通信は2030年前後には途絶えると考えられています。

なお、「太陽圏」と「太陽系」は似て非なるもので、太陽系はさらに遠方にある仮想的な天体群オールトの雲をも含むという考え方もあります。しかしボイジャー2号がこのまま飛行を続けても、オールトの雲の内縁に到達するのは約300年後、外縁を通過するには約3万年かかると考えられており、たとえボイジャー2号が生き残っていたとしても人類がその観測データを入手することは極めて難しい状況。

NASAのジェット推進研究所が発表した以下のムービーでも、ボイジャー2号の偉業の内容を見ることができます。

NASA’s Voyager 2 Enters Interstellar Space - YouTube